“キャロルクリスチャンポエル”が生み出した数多くのオリジナルデザイン。その中でも一目で衝撃を覚える究極のアイデアの一つとしてご存知”DRIP SOLE”がございます。
その名の通り靴底をドリップしたような奇想天外な造形は紛れもなく唯一無二。他が真似をしようものならそのブランドは二番煎じと酷評される事でしょう。
今回2008年にリリースされた初代のレザースニーカーが再生産され当店に入荷いたしました。当時よりもクオリティーを高め帰ってきた名作を是非ご覧くださいませ。
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BLACK × BLACK SOLE
革の迫力とドリップソールで靴の常識を大きくはみ出した”CCP”の名作”ドリップラバースニーカー。
誰もが目にしたことのあるオーソドックスな7ホールのハイカットスニーカーを最高品質のレザーで制作。そこに突飛なアイデアを加えることで芸術品と言えるほどのビジュアルが生まれています。
名前の冠に”NOSEAM” (縫い目の無い}とある通り、ベースのアッパーは一枚革で構成されています。
今回写真に映しているものは”ROOMS”と名付けられたカンガルーレザー。強度が高く軽量で馴染みが良いという性質から、高級なものはスポーツメーカーなどとも取り合いになる希少素材です。
染色する工程で革が解れてすでに柔軟性がありますが、シボが細かいこともあり、ここから足に合わせての変化も楽しめます。
シュータンの部分はレースを通すスペースがあり、編み上げの全貌が表に出ない仕様になっています。
ラフな雰囲気を和らげる思惑があるのでしょうか。レザーを被せる事で風格に貫禄が。
ホールには”CCP”のシューズ類では珍しくハトメ付きです。
さらにこのタンは多少の余分を持たせたうえで、側面のレザーと縫い合わせられています。
一つの筒になった状態のシャフト部に足が入れられるので革馴染みが甲の部分にもおよび、紐をしっかり締めた時のホールドは心地よさを感じます。
履き口にはクッションも付けられ足当りが優しく、デザイン面でも抑揚が付きます。
シューレースは長めの物が用意され、アンクル部分に巻き付けるのブランドからの提案。
背面にはプルストラップのように備えられたホールがあり、紐を通してお楽しみいただけます。
この大迫力のソールは着用していく事で消耗し、ゆっくりと地に足が着いていきます。折れたり削れたりとこれも演出の一部です。
一般的なスニーカーに当てはめるとトゥキャップ・廻しテープの部分を覆う大胆なラバードリップ。
“CCP”の作品の細かな製法が常に企業秘密なため、ここでの明記は我々もできません。
しかしながら接着分の仕上がりは過去の物と比べて明らかに向上しており、技術の進化が感じられます。
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BLACK × CLEAR SOLE
こちらは前述のオールブラックと同型のツーカラーモデル。
グリーン系に色付いたこのソール。ブランド側はあくまでクリアラバーと定義しており、製作の段階では実際に透明なものが用いられています。
このシューズのカラーリングは本体を完成させた後から染色を行う製品染めが用いられています。
ドリップラバーを取り付けた後に黒の染料に浸けるため、元々クリアカラーのラバーが化学反応を起こし、写真のような緑黄系に変色が起きるとの事。
簡単に出せそうもないランダムな色調にはこうした偶発的なプロセスが秘められているのです。
付属品は今回からスペアの紐がワンセットついています。長くご愛用いただけるシューズですので、いつかの交換に備えて大切に保管なさってください。
昔と違って高級スニーカーという選択肢が常識になった昨今。
毎シーズンいくつかのブランドから靴とともに「話題」がリリースされ、まるでアート作品かのようにその存在が神格化されます。
この現象を遡ると”Rick owens”や”BALENCIAGA”、そしてなにより”NIKE”の功績などが挙げられますが、常にそうした渦とは距離を取ってきた”CAROL CHRISTIAN POELL”。
自身の物差しでデザインと価格を決め、横並びを意識せずに誕生したこの一足も、未来永劫マイノリティーで有ることを意識して作られたのではないかと想像します。
何か周りに左右されず、自分の欲しいを信じて手にしたい特別なスニーカー。
決断には勇気が必要ですが、その見返りは非常に大きいはずです。
SHELTERⅡ 山崎