BORIS BIDJAN SABERI “P13”

”ボリスビジャンサベリ”の最高傑作”P13″。

デザイナー本人も自身の矜持を込めたと語るこのパンツには、彼が服作りを始めた頃の初心、そしてさらにはそれ以前の生活環境や、慣れ親しんだカルチャーが強く紐づいています。

同ブランドを語る上では絶対に欠かせない1本。とはいえボリスの商品を初めて買っていただく方にとっては少々高く付く入門アイテムになってしまうかもしれません。

しかしながら「ここまで高いパンツを買うのは初めて。」と仰るお客様ほどその後同型で2本目、3本目とお求めいただくケースが多く、”P13″との出会いをきっかけにボトムス狂となってしまいます。

いったいなぜこのパンツが人をそこまで引き付けるのか。改めて大解剖いたします。どうぞお付き合いくださいませ。

P13TF PANTS / BORIS BIDJAN SABERI

力強いオーラと美しいシルエットを同時に得ることのできるこちらは”P13″のタイトフィットモデル。

過去には”RF”(レギュラーフィット)、TF(タイトフィット)、XTF(エクストラタイトフィット)の3種類のバリエーションの”P13″が製作されていましたが、ここ数シーズンは”TF”のみのリリースに。

今後の展開は今のところ分かりませんが、現状このモデルがボリス氏が考える”P13″の理想の形と言えそうです。

素材に関してはシーズンによって異なりますが、基本ストレッチ素材が使用されています。

最も印象的なのが、独特のバックデザイン。

彼が愛するストリートカルチャーの一つ”sagging”(腰履き)風のデザインは、このブランドを象徴する一つのスタイルとなっています。

囚人服の風采を真似たラッパーやギャング系のファッションが起源とされているようですが、現在30代前後の方には「腰パン」と呼ぶのがしっくりくるかもしれません。学生服のズボンを下げて履いた記憶がある方もいらっしゃるかと思います。

私もまさしくその世代。そのせいか”P13″に足を通すと、心なしか気が少し大きくなります。

実際の形状は単に股上を長く設けているというよりも、腰の部分にややスペースを継ぎ足したイメージ。

実際着用する際のウエスト位置でヒップの落ち感の調節ができ、腰の位置を高く保っていただくと、すっきりと履いていただけます。

ヒップが下にダボっと落ちるサルエルの形状とは少し違うため、トップスが長くなくてもバランスよくスタイリングが可能。コーディネートをトータルで良く見せながら、デザインポケットの主張も際立つ秀逸なパターンです。

次に注目するのが太腿部分のカッティング。ここから漂うリメイク感にボリス氏の若いころの経験が重なります。

彼が服作りにのめり込むきっかけとなったのが古着のリメイク。すでに完成された洋服を自身の理想に変形すべく試行錯誤を繰り返し、彼は多くの技術やアイデアを手に入れました。

古着のデニムのポケット口からハサミを入れ、悪戦苦闘の末に誕生したオリジナルパターン。その名残がデザインとして”P13″には刻まれているのです。

ウエストのデザインも前述のリメイクから得たアイデアが活きています。

“P13″に限らずボリスの作るボトムスの多くはウエストボタンが2つついており、備え付けのコードも含め、フィット調節が可能。

スケートボードの愛好家である彼にとって、ボトムスに動きやすさ、調節機能を求めるのは必然であり、リメイクを学ぶ段階ですでに心得ていた重要なテーマと言えるでしょう。

スタイリングの最後の仕上げの微調整にも役立つこのディティールは、ユーザーの体型に対してジャストサイズを決めつけません。

少しゆとりをもたせたり、なるべくタイトに履いたりと、その方の理想に合わせたサイズ選びで楽しんでいただけるのもこのパンツの人気の理由。当店でお買い上げいただいたお客様のスタイリングも非常にジャンルレスです。

こちらも興味をそそるのが、ボタンフライ部の内部構造。

裏から見ると分かりやすいのですが、すべてのボタンが1本の紐でつながっており、最終的にはその紐がウエストの調節役も担います。

デザイン的なユニークさはもちろんのこと、ボタンをそれぞれパンツに縫い合わせないため、生地への負担を軽減。ボタンも外れにくくなるというメリットが出てきます。

裏側の縫い合わせはすべてパイピングによって仕上げられ、耐久性の高さを目で感じ取ることができます。

この安心感は長くものをご愛用頂くためには本当に重要。作り手のひと手間が着用者の愛着につながり、長期的に履いて頂くことで、経年による味が手に入ります。

一見悪そうに見えて、作りは非常に丁寧で真面目。このギャップにもグッと心が掴まれます。

内側裾付近に付けられたゴムループは足を通していただくと、写真のように裾をたくし上げての着用をお楽しみいただけます。

シューズを主張したい時や、履きシワを誇張したい際に大変有効です。

前回ショールームでボリス氏と会った際も、この写真のようなバランスで”P13″を履きこなしていました。

色々とディティールについてお伝えしてまいりましたが、その多くがデザイナー自身のライフスタイルに沿って作られているため、当然彼は自身の服がよく似合います。ボリスの服が世界一似合う人間は彼かもしれません。

ですがあくまでブランドとして、彼等が一番大切にしているのはユーザーが満足する商品を作ること。

一人でも多くのファンがより良い素敵な姿になるように、彼等が培ってきた経験を集約させ完成したものが、”BORIS BIDJAN SABERI”の製品として世に送りだされています。

そんなコレクションの中でも1番とブランドが豪語する”P13″。

履くと不思議と力が湧いて、少し強気になれる最高の1本です。

P13TF PANTS / BORIS BIDJAN SABERI

SHELTER2  山崎

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