以前よりブログでもご紹介したいと思っていた”エムエークロス”の新定番”ユーティリティージャケット”。
実はこの商品、2020春夏の商品で当店に到着したのが昨年の3月末。
店舗の臨時休業を余儀なくされる直前での入荷となってしまい、スポットが当てられずのままでした。
春物の入荷も少しずつ店頭に並び始めたこのタイミング。満を持してご紹介させていただければと思います。
ユーティリティーの名の通り、実用的なポケット使いが特徴のカジュアルジャケット。
“m.a+”が提案するワークジャケットというところで”utility”と名付けられていますが、着回しの良さといった意味でもこの言葉は当てはまってくるかと思います。
ご覧の通りスタイルを気にせず、お楽しみいただけるアイテムです。
早速ディティールを見ていくと、左胸のポケットは2層構造。
外に形が出ないため一見分かりませんが、どちらもしっかり深さがとられており、手前のポケットには眼鏡、奥のポケットにはペンがすっぽり収まりました。
基本的に独自性が強く、元ネタのあるデザインを頻用するブランドではありませんが、マウリツィオ氏自身、服の背景や歴史などのストーリーにも非常に深い関心を持っています。
このアイテムのソースも作業着という観点から見ると、左の胸ポケットはペン差しにあたる部分。そうした形式的な伝統にも配慮したのかなと個人的には解釈しています。
両腰部分のポケットは裾と底が一体化した無駄のないデザインとなっております。
こちらのポケットも非常に大きく、同ブランドの長財布“W10”がすっぽり収まる大容量。
シルエットや縫い合わせに沿ってポケットを配置するデザインは”m.a+”の多くの作品にみられるお家芸的な手法の一つで、
ここに体の動き、生地の馴染みも加わると、直線状のデザインバランスがやや崩れ、独特のシルエットに洋服全体が変化します。
そして特筆すべきはやはり独特の生地使いで表現したオリジナルパターン。
背面はごらんの通り1枚生地。実は両サイドの部分も概ね同生地でつながっており、前後ほぼ一枚生地で仕立てられています。
もちろん大きな生地を一枚切って繋ぐだけではこのような形状にはなりません。
そこでパターン引きから縫い合わせる過程の中で微調整を行うわけですが、この部分で先ほど注目した各ポケットが大きな意味を成してきます。
実際着用画像をご覧いただくと箱型ではありながらも、身体に沿う流れを感じていただけるかと思います。
特に脇下の部分のゆとりを抑え、胸ポケットのデザインがあることでその引き締めを誤魔化すかのように自然に表現。
腰のサイドポケットに関してはシルエットの横への広がりをやや誇張し、胸回りとのギャップを生み出します。
このメリハリをほぼ1枚の生地とポケットの配置で簡潔に表現するのは、基本的な服作りのテクニックを集結させるだけでは絶対にできません。
今まで一貫して独自性を追求してきたブランドだからこそ、このプロセスで当然のように良い服を仕立ててしまうのです。
なるべく生地をカットしない。身体の動きを考えて服を作る。
テーマは非常にシンプルですが、そこから感じる着心地であったり、生まれるラインだったりの芸術性は間違いなく”m.a+”の本質的な魅力。ファンの方々が求める旨味の部分と言ってほぼ間違いありません。
店頭では多くのお客様がご試着前に商品を平置きにして隅々までじっくりとご覧になられます。
そのあと実際に試着し鏡の前でにっこり。あの瞬間が私はたまらなく大好きです。
先日入荷した2021春夏コレクションからは数あるアーカイブ生地の中から、リネンベースの薄いストライプ生地をチョイスして同モデルをオーダーいたしました。
縦縞が入ることでよりパターンの構造を目で追っていただくことが可能です。
そしてこちらのジャケット、同素材のセットアップスタイルでお選びいただくことが現時点では可能です。
パンツはおよそ2年前のものになりますが、こうして再度セットアップでのご提案もできるようになりました。
こういったシーズンに流されない楽しみ方ができるのも、ファンの方々が一度ハマると抜け出せない理由の一つなのかもしれません。
SHELTER2 山崎